一軒家の我が家は耐震補強は不要!? ~耐震補強が必要な家、不要な家~
日本の一軒家で一番多い、木造2階建て住宅
我が家の耐震強度はどうなのでしょうか?
木造住宅において、耐震補強が必要なのか不要なのか、プロによる診断が必要なのかを解説しました
目次
そもそも戸建て住宅に耐震補強は必要?
過去の大地震で大破する家が多かったため、地震で木造住宅を強くするにはどこまで強度を高めれば良いか研究され、木造住宅を建築する時のルールである建築基準法が大きく変更されてきた歴史があります
建物は建てられた年代により強度が異なる
大きな地震が起こると、耐震の研究がされ、法改正が行われました
- 1978年 宮城県沖地震(マグニチュード7.4)
- 1981年(昭和56年)5月建築基準法改正施行
- 1995年 兵庫南部地震(阪神淡路大震災)
- 2000年(平成12年)5月建築基準法改正施工
- 2000年(平成12年)5月建築基準法改正施工
建てられた時期による既存住宅の耐震強度最低基準は大きく3つに分けられます
・1981年(昭和56年)5月以前の建物 旧耐震基準
・1981年(昭和56年)6月~2000年(平成12年)5月までの建物 新耐震基準
・2000年(平成12年)6月以降の建物 2000年基準
建築時期の確認方法
自分のお住まいは、どの時期の建築基準法で建築されたかを確認する必要があります
- 検査済証(建築確認済証)
- 建物の登記簿謄本の原因及びその日付欄
※日付と”新築”の文字が書いてある - 不動産売買契約書
- 重要事項説明書
建物の”検査済証”があれば、どの時期の基準で建てられたか正確に分かります
”確認年月”がその年月の建築基準法が採用されます
検査済証が無い場合で、その他の書類で法改正後すぐの年月の場合は、注意が必要です
確認年月が1981年5月で、登記が6月にあるものが存在するためです
このようなケースの場合は、書類+現場調査でどの時期の基準で建築されたが大体わかりますが調査が必要です
書類が手元に全くない場合は、法務局で登記簿謄本を入手しましょう
耐震強度の尺度の数値は2つある
建築基準法と品確法
建築基準法は人命を守ることを目的としたものです
2000年の建築基準法の最低限の強度を1.0とし、それの1.25倍1.5倍ある、0.7倍0.3倍しかないという数値で表します
品確法は人命+建物を守るためのに設けられたものです
耐震等級1~3で表現されます
耐震グレード1 建築基準法の最低基準の強度(1.0倍)
品確法:耐震等級1
震度5ではほどんど損傷しない、数100年に1度発生するかどうかの震度6強~7程度の地震に対して倒壊しない程度です
2000年の法改正後の、新築を建築する上での最低の基準です
建物は一応倒壊は免れ人命は確保でいるものの、柱や梁などの主要構造部が大破する可能性があります
建て直しの必要が発生する可能性もあります
耐震グレード2 建築基準法の1.25倍の強度
品確法:耐震等級2
建築基準法の1.25倍の強度は、長期優良住宅として認定されます
避難場所として認定される場所はこの基準を満たして建てられています
震度6強~7程度の地震にあっても 補修をすることにより住み続けられる程度の損傷しか受けません
耐震グレード3 建築基準法の1.5倍の強度
品確法:耐震等級3
災害時の復興拠点や病院、警察署、消防署などはこの基準です
震度6強~7程度に地震に合っても、軽い損傷しか受けません
補強はどこまで必要かを後半に供述します
地震に強い家、弱い家の見分け方
一般的に多い、木造に限ってのことではありますが・・・
木造住宅でも、正確な耐震強度を図るには耐震診断が必要ですが、弱い可能性があるかどうかは素人でもある程度はわかり、それにより診断が必要かはある程度わかります
建てられた年代
前述のどの時期の建築基準法で建築されたかは大きな尺度になります
窓の多い、少ない、大きい、小さい
窓やドアが大きい、多い=壁が小さい、少ない
ドアや窓は柱や梁とはつながってなく、薄いので建物を支えることができない
窓やドアは建物の弱点です
正方形、長方形、その他の形
感覚的に、細長い家(長い長方形)と真四角(正方形)に近い家ではどちらが不安定かわかると思います
真四角に近い方が強く細長い家の方が弱いと言えます
重い瓦、軽い瓦
頭の上に重たいものを乗せると、ふらふらすると思います
これと同じで建物の頭、すなわち屋根が重たいと、ふらふらする=揺れやすい家ということになります
軽い金属屋根等「強」>「弱」土の乗った日本瓦の家
となります
おおきな吹き抜けがある
前述の窓と同様、吹き抜けがあるということは、2階の床が無く広い空間があるということです
この部分も弱点になり、潰れやすくなります
お住まいの傷みが多い
雨漏れ、外壁のひび割れや脱落、蟻害などで、お住まいの腐朽箇所が多い場合です
せっかく強いお住まいでも、建物を支える柱や梁壁が腐朽しておれば、支えることができません
日頃のメンテナンスを行っているかが重要です
詳細は、国土交通省が監修し、日本建築防災協会が作った「誰でもできるわが家の耐震診断」と言いうリーフレットを、各市町村の建築防災課などでもらえたり、インターネットでも見ることができますので、そちらを参考にしてください
補助金を使って建築士の耐震診断ができる
「誰でもできるわが家の耐震診断」はあくまで目安です
問題ないとしても、厳密に調査すれば補強が必要な場合もあるので注意が必要です
反対に、問題ありとなっても建築士が調査すれば問題なしになる場合もあります
建築士の検査内容
木造2階建ての耐震診断では、耐震診断図面作成を行うために
- 壁の配置と量の確認
- 窓の大きさ
- 天井の高さ
- 壁の材質
- 柱梁土台の接続の方法
- 基礎の鉄筋の有無
- 建物の主要部材の腐朽の有無
などを行います
費用は有料ではありますが、建築士が行う耐震診断は各自治体補助金を出していたり、無料で建築士の診断をしてくれる市町村もあるので、各自治体の建築防災課等に相談してみてください
建物の強度診断
建物の強度は下記の内容を評価します
これらを総合的に数値化して建物強度を診断します
診断方法は一般診断法と精密診断法がありますが、普通の木造住宅は通常、一般診断法が採用されています
木造住宅の耐震診断は、壁や天井を壊さずに床下屋根裏などに入り込んで調べます
建物の構造
木造でもいろいろな建て方があります
- 軸組工法(在来工法)
- ツーバイフォー工法(枠組壁工法)
- 伝統工法
壁の量
簡単に説明すると、床面積に対して、壁の面積が多い家ほど強い家、壁ではなく、窓・ドア・引戸が多く、大広間が多く壁の面積が少ない家ほど弱いです
但し、大きい窓があってもその分補強していれば問題ないです
壁の量は建築基準法で決まっており、その量は法改正により増加しました
1950年 必要壁量が建築基準法で制定された
1959年 必要壁量の改定(増加)
1981年 必要壁量の改定(増加)
1981年以前に建築されたほとんどの建物は必要壁量が足りない場合が多いです
筋交い
建物を補強している筋交いの有無、取付方、太さなどを見ます
2階の床の構造
1階の床はあまり耐震強度に影響がないのですが、2階の床は建物強度に影響します
2階の床は見えにくい場合もあるので、1階の床を床下から見て、増改築をしていない限り大体同じ構造なので、2階の床の構造を想定する場合もあります
壁の配置バランス
単に壁の量が多くても北側に集中しており、南側に壁が無く窓が集中していれば、バランスが悪いお住まいということになります
東西南北バランスよく窓、玄関ドア、室内ドアの配置がされており、東西南北バランスよく壁があれば配置バランスがいいと言えます
柱梁土台の接合方法、壁の作り方
壁の量が多く、配置バランスが良くてもそれを支えている、柱、梁、土台が地震で外れてしまっては壁が崩壊し、建物の倒壊へとつながります
したがって、柱梁土台が強く結合されており、壁の板を柱梁土台に適切な釘で適切な方法で止められていると地震に耐える壁として機能するということになります
基礎の工法・強度
基礎が布基礎・ベタ基礎・独立基礎(石場建て)などがありますが
建物の基礎が地震で折れると、基礎に固定されている土台はズレ、柱抜けたりして倒壊につながります
基本的には鉄筋の量(間隔)コンクリートの強さを機器を使って調査を行います
また、ひび割れやその大きさや範囲も同時に目視点検します
建物の劣化度
建物の構造上主要な部分の劣化の状況を調査します
雨漏れ跡や白アリ害に合った跡などが特に構造材を腐朽する要因になります
雨戸の部分の構造
古いお住まいは、雨戸の格納部分に外壁が無い場合もあります
特に窓が多い、大きいお住まいは重要になるので、雨戸の格納部分の壁を確認する必要があります
地盤の状況
地盤が軟弱か、基礎のところどころにヒビが無いか調査を目視、聞き取り等、数値化された地域の係数等で簡易判断を行います
立地
建物が建っている場所が平坦地であるか、傾斜地であるか
また、道路よりも高い位置に建っており、その土台は鉄筋コンクリートの擁壁(ヨウヘキ)で囲われているか調べます
その他
増築、減築跡、床下の湿気状況、屋根裏収納の有無、など
その他前述の建物の重さ、形、強い壁弱い壁、2階の床の強さ、1階屋根がある部分の接合方法……
など、さまざまな要素も絡みあって耐震強度が計算されます
耐震、免震、制振、違いは?
①耐震とは
バランスよく耐震壁を設置し、基礎を強化し、腐朽部分を直します
地震の揺れに対して強固な構造の建物にするということです
低価格で工事を出来る業者が多く、実証結果もたくさん出ているので木造住宅の改修には最も適しています
②免震とは
建物を揺れないように、地盤と基礎の間に揺れない装置を設置します
基礎の下に入れるので、新築時にしかできないこと、コストが高額で工事を出来る業者が少ない、
実証結果が少ないなどの理由で木造住宅の改修では採用は難しいです
③制振とは
制振装置、ダンパーを壁内に設置して、揺れを吸収して建物の揺れを小さくします
前述のとおり、耐震強度1.0倍(耐震等級1)は人命を守ります
ただ、建物が大破する可能性もあるので、揺れを小さくして大破を逃れ修理して住み続けるようにし、大地震後の余震での損傷を抑えることもできます
耐震強度が弱すぎるお住まいには不向きですが、耐震補強と合わせて行えるので、大破を逃れるためには有効な工事です
木造住宅の改修では・・・・
耐震強度を最大限に高める又は耐震補強+制振装置の設置という選択になります
耐震補強はどこをどのように補強する?
耐震補強とは
- 強い壁をバランスよく作る
- 基礎を補強
- 建物を軽くする
- 腐朽部を直す
基本的にはこれらを行い、強固な建物に造り変えます
実際の耐震補強工事はどうするのでしょうか
現在の建物の強さを調べ、耐震診断を行うことが前提です
まずは、耐震補強の設計図を作り、補強計画を行います
補強計画では
できるだけ現在ある柱と梁土台を使って強い壁(耐力壁)をバランスよく作ることによりコストを下げることができます
窓などがまとまってある場所、大きな窓がある場所(縁側など)、建物の弱点に適切な強い壁を作ります
耐力壁とは
建物の重要な骨組みは、基礎、基礎の上に乗っている柱と同じ太さの土台、柱、梁、それらを結束している壁、2階の床です
一般的に筋交いが良く知られていますが、基本的には、土台、柱、梁を一体化した強い壁が耐力壁です
土台、柱、梁の接続部分を、強固にするために耐震金物を設置し、1枚合板(構造用合)で土台、柱、梁をつなげて一体化させます
これが耐力壁です
補強計画で、どこの壁にどれぐらい頑張ってもらうかということを計画、配置バランスをして、それぞれの耐力壁にどれ程の力がかかっても耐力壁が潰れない耐震金物を選び、場合により筋交いを入れて、それぞれの耐力壁ごとの受け持つ強度が違ってきます
壁が強くても地震で基礎が折れてしまっては意味がないので、基礎が弱い場合は、強い耐力壁を配置した場所の基礎にもう一本強い基礎を添えつけて、添木のような形で補強します
吹き抜け等の地震に対しての弱点がある場合は2階の床の補強を、火打ち材という材料を梁と梁が直角に接続される部分に斜めに取り付けて補強をおこないます
あとは、雨漏れや蟻害その他で、不朽や欠損している梁・柱・土台に埋め木や添え木、取替を行って補強します
重い瓦の影響で耐震強度が1.0を超えにくい場合は、場合により瓦を軽い瓦に葺き替えます
耐震補強はどこまでする必要があるのか
最低1.0倍(耐震等級1)
理想は1.5倍(耐震等級3)
耐震補強をするなら 耐震強度1.0倍(耐震等級1)が最低条件でまず命を守ることが前提になります
それから、大地震にあっても補修してその家に住み続けることができるように、どれだけ強度を強められるかということになりますが、費用や、間取りに制限がある場合もあります
重い瓦や外壁がある場合、単に軽い材料に替えるだけで揺れにくくなるので、耐震補強になる場合もあります
重要なのは壁の量とバランスと前述しましたが、壁の量を増やす必要があります
しかし、壁の量をやたらと増やすと大きな部屋が造れなかったり、窓がなくなったりと、生活する上で住みにくく快適ではないお住まいになる可能性があります
その場合は、プラスして制振工事を行います
揺れた場合でもすぐに揺れがおさまるようにすれば損傷範囲が狭くなるので、補修範囲が少なくなり、住み続けることが可能な場合も多々あります
私の営業エリアの大阪では、平面正方形でなく、長方形のお住まいがたくさんあります
そのようなお住まいは、強度を1.25倍にするには邪魔な壁を作る必要があります
そういう場合に適用します
耐震補強は規模の大きいリフォーム時に行うと安価にできる理由!
基礎を補強するには、床を解体して元に戻す必要があります
壁を補強するには、床、壁、天井を壊して建物を補強する必要があります
建物によっては、ユニットバスやシステムキッチン周りの壁の補強が必要な場合もあります
そのため、費用の半分以上は床、壁、天井、設備機器の取り外し復旧費用になることも多いです
例えば
- 耐震補強工事全体で300万
- そのうち、床壁天井設備の取り外し復旧費が200万
- 実質の耐震補強主工事は100万円
というような例もあります
したがって、大きいリフォームを行った時に補強しなければ、耐震補強工事を行う最適の時期を逃したと言っても過言ではありません
耐震補強を行うときに受けられる補助金や税制優遇制度
耐震補強を行う上でいくつか補助金や減税等の優遇制度があるのでご紹介します
詳しくは住宅リフォーム推進協議会が刊行している「マンガでわかる住宅リフォームガイドブック」も参考にしてみてください
自治体の補助金
耐震補強の補助金は市町村単位で補助額が異なります
40万円の自治体もあれば100万円の自治体もあります
設計費用が別で10万円出る自治体もあれば、補強工事の補助金に設計費用も含む自治体もあります
所得制限がある自治体が多いので注意が必要です
長期優良制度
長期優良制度は、住宅の長寿化と子育てしやすい生活環境整備、省エネ化するために支援を行う補助制度です
長期優良住宅制度の認定長期優良住宅の支援制度に、耐震改修工事の費用が含まれます
その他、省エネのために行う高断熱の窓リフォーム、床壁天井などの断熱リフォーム、給湯器、その他の補助が同時に受けられます
補助額は2024年で1戸に付き160万円上限、若者又は子育て世帯や三世帯同居対応にする場合は、上限額が210万円まで引き上げられます
税制優遇制度
耐震改修工事を行うと、所得税の減税を受けることができます
特にローンでリフォームの代金をお支払いする場合、10年間に渡り、住宅購入時の減税のように毎年ローン減税を受けることができるので、かなりの減税になります
ローンでない場合も単年度だけですが、所得税の減税を受けることができます
そのほか、固定資産税の減税や、親御さんから支援を受ける場合通常110万円以上の支援を受けると贈与税がかかりますが、上限額が緩和され無税になる場合が多いです
中古住宅購入時は耐震補強工事を行うと、不動産取得税の減税があります
このように、耐震補強工事を行うと補助金や税制優遇制度がたくさんあるので、ほとんどの工事で実質負担額が減ります
まずは我が家の耐震強度を知ることから始めよう
経済的な理由で小さいリフォームを順番に行っているお住まいが圧倒的に多いのですが、小さいリフォームを重ねる前に、お住まいの強度を知る必要があります
まずは、我が家の耐震強度を知って、計画的に補助金や減税制度を使って耐震化を進めていくことが、安心して生活していく上では大切ではないかと思います
さもなければ、せっかくローンが終わった、一応全部リフォームしたといっても、地震が来れば大破して元に戻せないこともあるからです
地震大国の日本の政府もこのようなことは国としても望んでいないので、補助金や減税制度を行って、耐震化を進めております
2024年1月1日に発生した能登地震において、
1981年以前に建てられた住宅→全半壊50%以上
2000年以降に建てられた住宅→全半壊10%以下
という結果が出ていることも考えてみても、まずは補助金を使って耐震診断を行うことが必要です